ペットボトルを最後まで飲まずに、そのままゴミ箱に捨ててはいませんか?
底にまだ飲み物が残ったまま、捨てられていたり放置されたりしているペットボトル。駅の構内やイベント会場などで見かけたことはないでしょうか。
残り具合も、底にうっすら残っている、といった程度ではなく、1割か2割、ひどいときには3割近く残っている場合も。
このペットボトルのちょい残し、決して珍しいことではないのですが、実は大きな問題につながる可能性があります。
この記事では、ペットボトルが最後まで飲めない理由やそのまま捨てる問題点、対処法などについて解説します。
ペットボトルが最後まで飲めない理由は?
ほんの一口か二口しか残っていないのに、なぜペットボトルが最後まで飲めないのでしょうか?
ネット上では様々な理由が考察されていますが、次の7つの説が代表的なものです。
- 衛生的に気になるから
- お腹がいっぱいで飲みきれないから
- おいしくなさそうだから
- 最後まで飲み干すのがさみしいから
- 飲み干す姿が見苦しいと感じるから
- 残すのが習慣・儀式になっているから
- 背後霊にお供えしているから
心理的な理由からオカルトっぽいものまで、さまざまな理由が考察されています。
まずは、これら7つの説について、一つひとつひも解いてみましょう。
衛生的に気になるから
個人的に最も納得いったのが、この「衛生的に気になるから残す」という説です。
直接口をつけて飲んだペットボトルは、雑菌が繁殖しやすく、食中毒などの原因となることがあります。
特に、夏場なんかにペットボトルを飲んで、2~3時間忘れて放置してしまうと、雑菌が繁殖していそうで私もなかなか飲む気になれません。
さらに、一度そういう”まがまがしい”ペットボトルができてしまうと、「臭い物に蓋をしたい」心理がわいてきます。
その結果、そのままゴミ箱にダンクしたり、部屋やオフィスに放置して知らん顔(当人は、おそらく本当に忘れていると思います)してしまったりするのでしょう。
お腹がいっぱいで飲みきれないから
ペットボトルを飲み干す前にお腹がいっぱいになり、残してしまう、という理由も納得がいきます。
炭酸ジュースや炭酸水だと、最初はおいしく飲んでいても、最後の方で飲みきれずに残してしまう、なんてことがあるでしょう(私も、小さい頃はファンタとか飲みきれずに残しがちでした)。
「最初から飲みきれるだけの量を買えばいいんじゃ?」と思うかもしれません。
しかし、買ったときは飲み切れるだろうと思って買っているし、量の多いペットボトルの方が割安だという”お得感”も手伝って、つい買ってしまうんですよね。
無理に飲んでも具合を悪くする可能性があるため、お腹がいっぱいでペットボトルを残すのはある種自然なことでしょう。
おいしくなさそうだから
「ちょっとだけ残った飲み物がおいしくなさそうだから飲まない」という理由は、シンプルながら説得力があります。
確かに、ペットボトルの底にちょびっと残ったジュースは、ぬるくなっていそうだし、積極的に飲みたい!とは思いませんよね。
何となく、公園かどこかの水たまりを連想したりして、「汚そう……」という印象も受けてしまいます(色の濃いお茶系だと特に……)。
こういった”何となくの汚らわしさ”から、ペットボトルを最後まで飲めないという人は、それなりにいるのではないでしょうか。
最後まで飲み干すのがさみしいから
「おいしいジュースを最後まで飲み干したくない!」という気持ちも、子供のころを思い出すとよく理解できます。
特に、いわゆる「ショートケーキのイチゴを後に取っておくタイプ」の人なら、この心理が何となくわかるのではないでしょうか。
私も、どちらかというと楽しみを後に取っておきたい人間だから、ペットボトルを最後まで飲むのがさみしい、という気持ちはよくわかります。
そして、「後の楽しみに取っておこう」と思って保存したまま、忘れて食べ物を傷ませてしまった経験も、小さいころにちょいちょいありました 笑
何事も終わらせてしまうことには、もの悲しさがつきまとうものです。
ペットボトルを最後まで飲めないのも、こういうさみしさを感じたくないという心理が働いているのかもしれませんね。
飲み干す姿が見苦しいと感じるから
ペットボトルを最後まで飲み干す姿が見苦しく感じ、残してしまうというのも理由の1つです。
人目を気にするタイプの人であれば、「飲み食いする姿を見られるのが恥ずかしい」という心理は理解できるのではないでしょうか(私の場合、若いころは、牛丼屋に一人で入るのにもかなり勇気が必要でした)。
ペットボトルを飲み干す姿も、顔を上に傾けて、口を開けて、こぼさないよう口をすぼめて慎重に飲んだりなんかして、言われてみれば確かにちょっと見苦しいのかもしれません。
家で一人で飲むのならいいのですが、外出先でペットボトルを飲む場合は最後まで飲めずに、そのまま捨ててしまうという人が案外多いのではないでしょうか。
残すのが習慣・儀式になっているから
「ペットボトルを最後まで飲まずに残すのが習慣になっており、そうしないと落ち着かない」という、ある種の”儀式”になっているから、という理由はとても興味深いものです。
これは、いわゆる「プチ強迫性障害」と呼ばれるものです。
強迫性障害(Obsessive-Compulsiive Disorder:通称OCD)は、不安や心配を生み出す考え(強迫観念)が頭から離れず、その不安や心配を払拭するために、「儀式」といえるようなある行為(強迫行為)を何度も繰り返してしまうという病理のことです。
軽い強迫性障害なら暮らしにはほとんど影響はないですし、暮らしも破綻しません。そのためほとんどの人が、これがある種の障害であると気づきません(中略)このような状態を私は「診断未満だが生活の質低下のリスクが高い状態」と定義して「プチ強迫性障害」と呼んでいます。
引用:精神科医が教えないプチ強迫性障害という「幸せ」 気になってやめられない「儀式」がある人の心理学 杉山崇 , p15~16 , p22
プチ強迫性障害自体はそれほど珍しいことではなく、例えば、出かける前に「ガスの元栓閉めたっけ……?」と何度も確認する「確認強迫」や、三島由紀夫なんかもやっていた「入眠儀式」なんかも身近な例でしょう。
こういったある種の儀式は、強迫観念から生まれるものです。
心理学では強迫性障害は「強迫観念」と「強迫行動」に区別されています。強迫観念とは心配を生み出す連想のことです(中略)そして、強迫観念がもたらした「心配」が不安の方程式を発動させ、私たちを心配払拭(=強迫行為)に駆り立てます。
引用:精神科医が教えないプチ強迫性障害という「幸せ」 気になってやめられない「儀式」がある人の心理学 杉山崇 , p139
「ペットボトルを最後まで飲まないようにしなくちゃ」という強迫観念は、例えば、「ジュース飲みすぎたらご飯食べられないよ!」と親に注意されたり、「すごいがっついてジュース飲むね」と友達にからかわれたりといった経験から生まれます。
強迫観念からくる強迫行為は、強い習慣となり、時が経って強迫観念がすっかり忘れ去られたとしても残り続けるでしょう。
そうすると、なぜだかはっきりわからないけど、ペットボトルが最後まで飲めないようになってしまうのです。
「何となくペットボトルを残してしまう」という人は、もしかすると自分の気持ちを落ち着けるための儀式となっているのかもしれません。
背後霊にお供えしているから
最後に、若干オカルトチックな理由として、「背後霊にお供えしているから」というものがあります。
特に、「なぜだか毎回ペットボトルを残してしまう」というように、原因に心当たりのない人は、背後霊へのお供えしている可能性がある、という説です。
心霊とかに興味がないと、笑ってしまいそうな説ですが、私は根拠がないわけではないと思っています。
このような説が出てくるのは、水をお供えするという日本の文化があるからです。
例えば、神様へのお供え物は米と塩、それに水が基本で、実際私の実家の神棚にも、水器に入れた水を必ず備えていました。
また、水と幽霊に関して日本人が一般的に持っているイメージも働いているでしょう。
番町皿屋敷のお菊さんは井戸から出てくるし、現代のホラーでも貞子は井戸から這い出るし、タイトルでも『ほの暗い水の底から』とか、水と幽霊とが密接に関連したイメージを持っていますよね。
こういった文化を日本人が有していることから、”なぜか”ペットボトルが最後まで飲めない現象に対して、「背後霊へのお供えもの」というような合理化を行っているのだと考えられます。
個人的な考えでは、”なぜか”ペットボトルを残してしまうのは、あくまでも先に述べた「習慣」や「儀式」に基づくもので、個人的なものです。
「背後霊へのお供え物」という説は、原因が明確でないために、日本の文化のイメージを参照して作りあげた、民族的な合理性を備えた物語であり、だからこそみんなに受け入れられて広まっているのではないか、と私は考えています。
ペットボトルを最後まで飲まずにそのまま捨てる問題点とは?
ペットボトルが最後まで飲めないのは、珍しいことではないし、確かにもったいないけれどもそこまで非難されるような行為というわけでもないでしょう。
問題なのは、最後まで飲まなかったペットボトルを、そのまま捨てる行為です。
ここでは、最後まで飲まないペットボトルをそのまま捨てると、どのような問題があるかについて解説します。
リサイクルができなくなる
中身の残ったままのペットボトルは、リサイクルすることができません。
ペットボトルはリサイクルすれば衣類や容器、文房具などさまざまなものに生まれ変わります。
ところが、中身の残ったペットボトルは、品質が悪いと見なされ、リサイクル業者に買い取ってもらうことができないのです。
リサイクルできなかったペットボトルは、最終的に燃やすか埋め立てて処理されてしまいます。
ペットボトルを最後まで飲まないことで、間接的に資源の無駄遣いへ加担してしまうのです。
ゴミ処理のコストが増える
中身の残ったペットボトルはリサイクルできないため、ゴミ処理に余計な手間が増え、コストが増えることにもつながります。
ペットボトルを最後まで飲まずに捨てることで、例えば以下のような余計なコストがかかります。
- 適切な処理施設への運搬費用
- 焼却、埋め立てにかかる燃料費や処理費
- 作業する人たちの人件費
リサイクルできるペットボトルとできないペットボトルでは、処理方法が異なるため、適切な処理施設へ運びなおす必要があります。
運びなおした先で中身の残ったペットボトルを処理するには、焼却のための燃料費や、埋め立てのための処理費などのコストが必要です。
また、リサイクルできないペットボトルの分別作業や運搬作業など、余計な仕事が増えるため、人件費もかかります。
これらの費用の財源には、私たちが国や自治体へ納めている税金が含まれています。
ゴミ処理コストの増大は、私たちの税金の無駄遣いにもつながっているのです。
ちなみに、自治体が回収したペットボトルは、リサイクル業者などに売却され、そこで得たお金は自治体のものとなります。
きれいなペットボトルほど高く売れ、飲み残しのあるペットボトルは処理されるだけでお金にはなりません。
きれいなペットボトルが多い自治体ほど、ペットボトル回収のコストを収入でまかなえるため、浮いたお金が社会福祉や教育に回される可能性が高まります。
ペットボトルをしっかり空にして捨てることが、巡り巡って、私たちの暮らしにとってメリットとなるのです。
環境に負荷を与える
ペットボトルがリサイクルできないと、環境にも負荷を与えてしまいます。
例えば、汚れたペットボトルを焼却処理する場合だと、石炭や石油を燃やすことで温室効果ガスが排出されてしまいます。
また、埋め立て処理する場合も土壌汚染など環境悪化の原因となるでしょう。
たかがペットボトルのちょい残しが、巡り巡って環境に負荷を与えてしまうというのは、なかなかショッキングな事実ではないでしょうか。
ただ、そもそもペットボトルをリサイクルするのにも、巨大な機械を動かさなくてはならず、そのために燃料を燃やすことで大量の温室効果ガスが排出されています。
このため、世界的にはペットボトルをなるべく使わない「脱ペットボトル」の流れが進んでいます。
炭酸水メーカーのブランド”ソーダストリーム”も、この脱ペットボトルの流れに賛同し、さまざまな環境PRを行っています。
【脱ペットボトル?】ペットボトルのちょい残し対策5選!
ペットボトルのちょい残しをやめるには、大きく2つの方法があります。
- ペットボトルの飲み物を飲まない
- ペットボトルの飲み方を見直す
ペットボトルが最後まで飲めないのには、心理的な理由があります。
そのため、無理やりやめようと思っても、そううまくいくものではありません。
自分の行動パターンや心理的な癖を自覚したうえで、心の負担にならないような、自分の気持ちが落ち着くような方法で、ペットボトルのちょい残し癖から抜け出しましょう。
ここでは、ペットボトルがどうしても最後まで飲めない人のために、ペットボトルのちょい残し対策を5つご紹介します。
飲み物は水筒などに入れて持ち運ぶ
自宅であらかじめ水筒に飲み物を入れて持ち運べば、外出先でペットボトルを使わなくて済みます。
これは、私も普段から実践していて、仕事場へは水を入れた水筒を必ず持って行っています。
暑い夏場なんかは爽やかな気持ちになりたいから、炭酸水メーカーで作った炭酸水なんかも持ち運びたいな、と考えています。
水筒やマイボトルを持ち運べば、ペットボトルを出先で買う必要はありません。
ちょい残ししたままペットボトルを捨てて資源を無駄にすることもなければ、生活費の節約にもつながります。
ウォーターサーバーを利用する
飲みたいときに好きな量を飲めるように、ウォーターサーバーを利用するのもおすすめです。
ウォーターサーバーであれば、少なくとも自宅ではペットボトルを使わなくて済みますし、水筒に入れて持ち運ぶこともできます。
「ジュースを飲みたいんだけど……」という人であれば、家庭用のドリンクサーバーを買ってみるのもおすすめです。
また、オフィスにウォーターサーバーやドリンクサーバーがある場合は、なるべくそこから飲むようにすると、ペットボトルを使わずに済みます。
「飲みたいと思ったらすぐに飲める環境」をデザインするインフラ作りは、海外ではペプシコが「ソーダストリームプロフェッショナル」というサービスで行っています。
SodaStream Professional by PepsiCo
ソーダストリームプロフェッショナルは、専用アプリとドリンクサーバーを連携させることで、飲みたいときにすぐ自分好みの飲み物が提供される、ドリンクインフラサービスです。
海外ではAmazonやMicrosoft、Intelなどの企業が導入しており、おそらく日本でも今後広まるのではないかと予想しています。
こういったドリンクインフラが本格的に整備されれば、ペットボトルゴミは大幅に削減されるでしょう。
飲みきれる量のペットボトルや缶を買う
「やっぱりペットボトルの飲み物が飲みたい!」という人は、飲みきれる量のペットボトルを買うようにしてはいかがでしょうか。
特に、「量が多すぎて飲みきれない……」という人であれば、一回り小さいペットボトルや、持ち運びしにくい缶ジュースを買ってみるとよいでしょう。
また、「飲み干すのがさみしい」と感じる人も、最初から少ない量を買うようにすれば、”その場限りの楽しみ”として行動にメリハリをつけやすくなります。
気軽に持ち運べるペットボトルは確かに便利ですが、その便利さのせいでちょい残しが起こるのなら、あえて不便なものを買ってみるのも1つの手ですよ。
ペットボトルに口をつけずに飲む
「衛生的に気になってつい残してしまう……」という方は、ペットボトルにできるだけ口をつけないようにして飲むのも1つの方法です。
私は、ペットボトルはもちろん、水筒でもこの方法を実践しています(その際、おのずと口元を隠すように手で覆います 笑)。
これもある種の強迫行為だとは思いますが、個人的にこうしないと落ち着かないのでこうしています。
ただし、飲み口の広いペットボトルだと、口元からこぼしてしまうかもしれません。また、自分でやっておいて何ですが、正直見栄えもあんまりよくないと思います。
自宅なら、まぁ、構いませんが、外出先でやる際は注意した方がよいでしょう。
飲みたくなくなったら流しに捨てる
もっともシンプルな対処法が、飲みたくなくなったら必ず中身を流しに捨てることです。
中身を捨てるのは確かにもったいないのですが、残したまま捨てたり放置したりするよりははるかにマシです。
特に、ペットボトルを残すのが儀式になっている人は、その行為のおかしさを意識し、”中身を捨てる”という別のより合理的な儀式で置き換えることで、ちょい残しから抜け出す一歩となるでしょう。
自宅であれば台所の流しに、職場であれば給湯室なんかに流しがあると思いますので、ペットボトルが残り少なくなったらそこへ捨てるよう意識づけてみてください。
しっかりと習慣づけるために、ルールを設けてみるのがよいでしょう。
例えば、「ペットボトルが10分の1くらいになったら必ず捨てる」とか、「飲み始めて2時間経ったら必ず捨てる」といった具合にです。
もしも中身を捨てるのをもったいなく感じるなら、そのまま捨てる行為とどちらがもったいないか、その都度心の中で思い返してみてください。
まとめ
それでは最後に、ペットボトルが最後まで飲めない理由や対処法について、簡単にまとめます。
- ペットボトルが最後まで飲めない理由は、衛生的に気になるからや背後霊にお供えしているからなど、心理的なものからオカルト的なものまでさまざまある
- ペットボトルを残したまま捨てると、リサイクルできなかったり行政のコストがかかったりなどの問題が生じる
- ペットボトルのちょい残し対策には、水筒を持ち運んだり飲みきれる量を買ったりなどの方法がある
ペットボトルが最後まで飲めない、という人は意外といます。
それ自体は、そこまでいけないことでもないのですが、そのペットボトルをそのまま捨てる行為には、かなり大きな問題があります。
一番いいのは、脱ペットボトルを目指すこと。
私は普段、炭酸水メーカーを使っていますが、これのおかげで毎週20本以上出ていたペットボトルゴミがなくなり、生活がものすごくスマートになりました。
大量のペットボトルゴミに埋もれることなく、シンプルで快適な生活を送るためにも、ぜひあなたなりの方法で脱ペットボトルを目指してください!